読書のススメ「渚くんをお兄ちゃんとは呼ばない」
芹澤です。こんばんは。
私事ですが昨日、2月6日は誕生日でした。
たくさんの方にお祝いメッセージをいただき、本当にありがとうございます。
もはや祝われるような年齢でもないのですが、血のつながった家族すら一言もメッセージをくれないのに一度もお会いしたこともない方々から「おめでとう」と言われるのは何歳になっても嬉しいものです。
真冬の寒い夜にたったひとりで私を生んでくれた母にも「ありがとう」を伝えておきました(出産予定日前で父が出張中だったため母はひとりで車を運転して病院に行ったそうです。すごいね!)
さて今回は久々にオススメ本の紹介です。
ツイッターでいつもお世話になっているフォロワー様の著書「渚くんをお兄ちゃんとは呼ばない」(みらい文庫)です。
「渚くんをお兄ちゃんとは呼ばない ~ひみつの片思い~」 著:夜野せせり
鳴沢千歌、小学5年生の漫画好きの地味女子。なんと、パパの再婚相手の息子が、学校1のモテ男子・渚くん……。反発する千歌だけど、いっしょに暮らしはじめて、近すぎる距離の渚くんに、ときめいちゃって……? ドキドキ初恋ストーリー!
まずお詫びします。
発売されたのは2017年。にもかかわらずご紹介が遅くなってしまったのは私自身に原因があります。
ふだん読むライトノベルに対して児童本を「子ども向け」と甘く見ていたからです。
自身が小学生のころは「ちゃお」「なかよし」「りぼん」などのマンガに夢中で、児童本と呼ばれるものをちゃんと読んだ記憶がありません。小説らしい小説は中学生になってから手にとった「スレイヤーズ」だと思います。
とにもかくにもバカにしていました。甘く見てました。本当にごめんなさい。
だって読みはじめたらあっという間に引き込まれ、読み終わった瞬間に「はやく次読みたい!」とウズウズしてしまったのですから。
魅力のすべてを語り尽くすことはできませんが簡単に「ここが良かった!」理由をご説明します。
キャラが好き!きゅんきゅんしまくり。
主人公の千歌ちゃんはマンガを描くのが好き。なんだか自分の小学校時代を思い出しますね……マンガのペン入れまでできるなんて尊敬しちゃいます。諦めない強い心と他人を許す優しい心をもったステキな女の子です。
対する渚くんはモテモテのサッカー少年。がんばって描いた千歌ちゃんのマンガを「すげー」とまっすぐ褒めてくれる。いやー、ほれちゃいますよこれは。
脇役もいいですね。ライバルのせりな(名前からして可愛い)とイヤミなお調子者の杉村がピンチをつくってストーリーを転がし、千歌ちゃんと渚くんの絆を深める役割を担っています。さすが、面白いお話は脇役がいいものです。
他にも魅力的なキャラがいますが、私の妄想をかき立てたのは渚くんの兄とパパさん。
兄の悠斗くんは人当たりは良いけれど弟の前だと尊大になるようで……。あれですね、まじめすぎて背負い込んでしまうタイプですね(ラノベなら闇落ちキャラです)
そして驚くべきはかかりつけの歯科でみちるさん(渚くんの母)のハートを射止めたパパさん! 歯科での恋愛はかなり難易度高いと思いますよ(自論)。優しそうな顔して意外とやるやないか!
読みやすい!ごくごく読める。
夜野さんの文章はとてもなめらかで語彙が豊富で描写力に優れています。十分すぎるほどの文章力で「ひらがな」と「読点」多めの本作を書かれているのですが、これがとても読みやすい。あっという間にストーリーが展開していきます。
また、こっそり描いていたマンガをクラスのみんなに見られちゃったり渚くんとケンカしてしまったりと辛いシーンもありますが、その後のネチネチ&鬱々が早い段階で解消されるのでストレスがありません。
イラストー!イラスト好きー!!
イラストは森乃なっぱさんが描かれているのですが「ちゃお」や「りぼん」を思い出す可愛らしい絵柄でとても良いです。挿絵が多いのも嬉しい。
どうしてこんなに読みやすいのだろう…
ここまで感情にまかせて書き綴りましたが、ふと立ち止まってなぜこんなに夢中になっているのか考えてみました。
思い返せば、自分が応募していたラノベの賞の受賞作品が刊行されれば手に取るようにしていましたが、正直、なかなか読み進めることができませんでした。
というのも、多くの伏線や巧妙な駆け引き・エログロ描写・胸ばかりが強調される女の子・現実にはありえないシチュエーション…。
読んでいて疲れるんです。すごく。
例えるなら栄養にはなるけれど苦くてマズいイワシをボリボリとかじっているような感覚です。内容が頭に入ってこないのでページを飛ばしてクライマックスだけチラ見することもしばしば。買っただけで積みあげている書籍もひとつやふたつじゃありません。
単純に自分の頭が悪い・好みじゃない等の問題もありますが、こんな可能性に思い至りました。
毎日の仕事で心も体も疲弊しているため、インプットするだけの容量が足りていないのかもしれないと。
ライトノベルって本来は重厚な日本文学を軽く文体で読みやすく「ライト」にしたものだと思いますが、いまの自分にはそれすら受け入れる余裕がない…。
が、この小説はあっという間です。さっぱりしたオレンジジュースを一気飲みしたくらい一瞬。「こんなんじゃ全然足りない。もう一杯!」そんな気持ちになったのは久しぶりです。本当に面白かった。
この気持ちをだれかと分かち合いたいのですが、なにせ「児童本」なので感想欄は小学生の子どもを持つ親御さんや当事者さんのものばかり。このブログで本作が気になった方、ぜひご一読いただいて小学生みたいにキャアキャア語り合いましょう( ̄∇ ̄)
「本を読みたいけど疲れている」
「本を読んでも内容が入ってこない」
「テンプレのライトノベルに飽きた」
「絵本ほど子ども向けじゃなく、ライトノベルほど長くない適度な文章を読みたい」
そんな方に読んでもらいたい一冊です。
あまりの面白さにびっくりすると思います。
総合評価:★★★★(★5つ中)
フォロワー様ということもあって贔屓めになっているかもしれないと思い、-★にしましたがすぐにでも続きを読みたいです(買いに行きます)。
現在7巻まで刊行中。刊行ペースが早いのも魅力ですね。3月には8巻も発売されるそうですよ。